アイコン日本の音楽と舞踊の魅力を探る Vol.22

      ゆうらくの美〜ファイナルステージは芸に遊ぶ〜
     
レクチュア「ゆうらくの美考」その1

平成22年12月3日(金)
紀尾井小ホール

「ゆうらく考」

聞き手 花柳園喜輔

ゲスト 杉 昌郎(集団日本の音主宰)
    藤舎呂船

左から 藤舎呂船、杉 昌郎、花柳園喜輔
中央 花柳園喜輔、右 藤舎呂船
花柳  皆様こんばんは。花柳園喜輔でございます。本日は師走のお忙しい中をご来場賜りまして誠にありがとうございます。この「日本の音楽と舞踊の魅力を探る」シリーズ公演、2000年からはじまりちょうど今回が十回目でファイナルステージとなりました。「ゆうらくの美」と題しましてファイナルステージは芸に遊ぶというタイトルでございますが、まだまだ芸に遊ぶ心境ではございませんで、いつも四苦八苦の状態で踊らせていただきますが、様々な方たちとの出会いがあって、本当にこの十年間楽しかったという思いがたくさんいたします。本当に皆様にもご支援いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。
 ただいまは「猩々意想曲(しょうじょういそうきょく)」をご覧いただきました。
 「猩々」というのは中国の伝説上の架空の動物でございます。獅子とか麒麟とか、キリンビールのあのラベルですね、それから龍とか、ともかく幸せを呼ぶ動物とされておりまして、この猩々も大変愛らしく顔は少年のごとき童顔で、全身を赤毛に覆われた類人猿みたいな妖精なんでごさいましょうか、潯陽の江(しんようのえ)のほとりに住む高風(こうふう)が大変親孝行で、酒売りをしていると、そこへ潯陽の江から浮かび上がった猩々がお酒を所望します。そしてお酒を振舞うと、喜んでそれを飲んで、舞を舞う、そういう伝説の中から能ができまして、さらに日本舞踊でも「猩々」という曲がございますが、これは今回は器楽曲、打楽器だけで構成されております。それを私は今回は高風が、やや年をとって、ありし日、月光のもとで猩々と酒を酌み交わして楽しかった頃のことを思い起こし、また猩々が現れないだろうかな、それから自分の若かった頃を懐かしむような設定にいたしまして、自分の心の中にある猩々というものを踊ってみたいと思いましたので、酒売りと猩々を二役兼ねて作ってみました。それは、人間の中にある若さと老い、また、人間と妖精、自然界ですね、そういう自然と人間が調和して生きられたらいいなという思いで作りましたけれど、まだまだできたてのホヤホヤですし、とにかく歌詞がないので頭の中が時々振り付けが真っ白になってしまって、どういう風に動いたらいいのかと迷う時もございますけれども、工夫を重ねてさらによりよいものにしていきたいと思っております。
 さて、今回レクチュアのゲストとしてお招きしましたのは杉昌郎先生です。
 「集団日本の音」を主宰していらっしゃいまして、大変に日本の音楽には精通してらっしゃるし、踊りももちろんよくご存知の方です。ご紹介したいと思います。
 では、杉先生、よろしくお願いいたします。
杉昌郎氏登場。
花柳  ご覧のように細身で、足長で、これがもう何十年も変わりません。私、何十年前に初めて見たときは足長お兄さんだったのが、足長おじさん(笑)、くらいになったくらいで、
 おじいさんになっちゃいました。
花柳  いえいえ。ほんとにプロポーションが変わらない、誠に不老不死の薬でもなんか飲んでるじゃないのかなと思って。お酒はどうですか。
 だめです。一滴も。
花柳  そうですか。どうぞ今日はよろしくお願いいたします。
 こちらこそよろしくお願いいたします。どうぞよろしく。彼とは古いつきあいなんですよ。
花柳  そうですね。
 あなた、まだ学生だったでしょ。
花柳  はい。鈴木君のころです。
 そうです。そうです。かわいい坊や、かわいくはなかったね。こまっしゃくれた坊やでした(笑)。そこからのお知り合いで(座る)
花柳  あの、杉さんは小学校をずっと回って、子供たちに日本の音楽や舞踊を知らせたいということで、ずっとやってらしゃいますよね。
 実は今朝もやってきたんです。豊島区公会堂で。あれ、何校きたんだろう。2回公演でした。小学生たちに日本の音楽生演奏。「越後獅子」とそれから筝曲「六段」と「春の海」と聞かせてまぜっかえしてきました。子供たちと。一緒に最後にみんなで「さくら」を歌ってね。そういうことをやっております。物好きな人間でございます。
花柳  それは学生の頃にお手伝いしたことあります。
 はい。そうです、そうです。
花柳  はい。
 それの彼の初期の頃は、それ、四十何年になる?四十年近くか。
花柳  そんなことはございません。まだほんの十年(笑)・・
 あなた、まだオムツしてたんでしょ。そのころから手伝ってくれてたんです。
花柳  そんなようなご縁でね。それと、私が若かりし頃といいますか、杉先生が「なんたって舞踊家は北州がきちんと踊れなくちゃいけないんだよ。」とおっしゃられたのが心に残っておりまして、第十回目のファイナルステージはなんとしても杉さんにきていただきたいと一回目から思っておりました。
 恐れ入ります。そんなことを口走ってたのか、生意気にも。
花柳  そうなんでございますよ。でも、本当によく来てくださいました。お忙しい中。
 いや、本当に北州をちゃんと踊られる舞踊家さんに成長されまして、頼もしい限りでございます。この判定は、そちら様(お客様)でなさっていただければよろしんです。
花柳  それから、もう一つは、ここでは毎回いろんな音曲をご紹介するということで、清元、長唄はもちろんのこと、古曲から、この十回でほぼ、全部いたしました。ですけど、お囃子がまだだったんですね。お囃子というのは古典的なものでは独立した曲はなくて、いわば音楽、三味線音楽のですね、効果を高めるような縁の下の力持ち。
 あしらい的なね。立場の効果なんですよ。なきゃ困るものなんですけれども、あまり仰々しくする形ではなかったんですね。そういうことでしょ。
花柳  はい。そうです。それで今回は「猩々意想曲」というお囃子だけの曲がございますので、これを取り上げて、それからまた下座(げざ)の音楽の効果というものを知っていただきたいと思って短い時間ではございますが楽しみにしております。
 はい。
花柳  まず藤舎呂船さんをご紹介いたします。藤舎流の家元の六世藤舎呂船さんでございます。
藤舎呂船氏登場。
花柳  今日はありがとうございます。
藤舎  どうも。よろしく。なくてはならないお囃子をやっております、藤舎呂船と申します。今日は十回目でお囃子にスポットをあててやらしていただきましたので、できる限り下座音楽なんかにもご説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
花柳  真打ち登場でございます。楽器の説明やらお囃子の特性を教えてください。
藤舎  はい。
花柳  よろしくどうぞ。
 それじゃ、楽器の皆さんもお入りいただいて、四拍子のね。どうぞお入りください。(登場)一番基本的な邦楽楽器ですね。これをご紹介していただくところから始めたいと思います。
藤舎  僕たちは、歌舞伎囃子、歌舞伎から出てる囃子なんですね。それが元になっているのは、能楽囃子と、それから後にいろんな工夫を加えまして、いろんな風に、たとえば場面によっては江戸神楽を打ったりする、いろんな打ち方をして効果を出すお囃子でございます。
    まず能楽風に四拍子といって、ちょっと楽器の説明をさせていただきます。
能楽は、僕たちは太バチと言ってるんですけど、太いほうのバチで打ちます、紀元前六世紀頃の遺跡から、ハニワから太鼓を打ってるハニワが出るんですね。それから発してると思います。これは締太鼓と僕たちは言ってますが、ちょっと打っていただけますか。(打つ)単音で一つのピッチでしか音が出ませんが、これを小さく打ったり大きく打ったり、付けて音を長く持続させたりする打ち方でもっていろんな表現をしております。簡単にやりますけど、これが締太鼓です。
    その次は、大鼓(おおかわ)という楽器です。仏教伝来が六世紀頃にありましてですね、その時、雅楽が、インド、中国、それから朝鮮半島を経て日本の国へ文化が入ってきた時にですね、雅楽の中に一の鼓、二の鼓、三の鼓、四の鼓と、四つ鼓がありました。その一の鼓の変形したものが、こっちの小鼓だと言われております。それで、ちょっと逆になりましたけど、二の鼓がおおかわと言われております。これは江戸時代、鎖国になりまして、大変日本独特の改良をされてこんな風に、今、打っております。これは、大変高いピッチの音が出ます。強い音が出ます。ちょっと打ってみてください。(打つ)そうですね。とっても鋭い音がします。これには大変な作業が必要なんですね。強く、調べと言いますこの紐をですね、締め上げましてですね、その前に火であぶって乾燥させてですね、打つんですね。ですから、強いピッチの音、高いピッチの音が出ます。



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