アイコン日本の音楽と舞踊の魅力を探る Vol.6

レクチュア「えんの美考」 その一


左 園喜輔、 右 村尚也

園喜輔:皆様、今晩は。師走のお忙しい中をご来場いただきまして、誠にありがとうございます。「日本の音楽と舞踊の魅力を探るシリーズ」として第6回目。今日は、「えんの美」と題しまして、お送りいたします。
毎回、ひらがなでテーマを決めご覧いただいておりますが、今夜の「えん」は、ゆかりの縁、つやの艶、うらみの怨、こちら(指でお金の形)の方の円、そして私、花柳園喜輔の園(その)もえんでございます。
こうやってたくさんの「えん」というものがございまして、後でゲストの方に、いろいろ面白く聴かせていただきますが、こうして皆様と同じ時間を共有できるご縁を、本当に嬉しく思っております。
レクチュアですが、これからゲストをお迎えいたします。今日のゲストは、評論家の村尚也さんでございます。どうぞ

(村氏登場)。

園喜輔:村さんは改めてご紹介するまでもなく、評論家、プロデュース、振り付けと何でもござれのマルチ人間でいらっしゃいまして、日本の音楽や舞踊の発展に大いにお力添えいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
村:どうぞよろしくお願いいたします。園喜輔先生とは――先生はナシですか――でも先にお生まれになったのでは。

園:知りません(笑)。

村:ちょっとだけ先だったと思いますが……。園喜輔氏とは、初めてお舞台をご一緒するんです。ですが、十数年の知り合いで。園喜輔氏も私も東京都北区赤羽に住んでおりまして、それがご縁だったんですが。私には娘がおりまして、保育園に通っておりまして、私の方が園喜輔さんよりも先に保育園に行ってまして、双子の弟の坂東鼓登治(村氏本人のこと、舞踊家としての名前)が踊りをやっているものですから、保育園の先生が、男の人が踊りをやっているのは珍しいと。それから1年後に、同じ赤羽に住んでいる男性の舞踊家さんがお子さんを預けていると聞いたんです。その時まで、園喜輔さんのことは全然存じませんでした。
するとある日、保育園の前を、セーター姿で自転車に乗っている男性が、サーッと通っていきました。その時私は、あ、この人だ。これはデキルぞ! と思ったんですね。即、体つきとか物腰でわかってしまったんです。それでこの方はどなただろうと思い、すぐに北区の名簿で調べまして、あれだけデキル方はきっと名のある方だと思いまして、あ、これは花柳園喜輔氏だと直感しまして、で、知り合ったんですね。それが、ご縁の始まりでしたね。

園:お互い子育ての最中で、チャリンコで保育園に行った仲でございました。

村:保育園の運動会で僕はまず絶対に走らないのですが、(こちらの)お父様は内股で走るんですね(笑)。それがひじょうに目立ちまして、大変美しいものでした。

園:そのぐらいにしていただいて。
今日は「三曲糸の調」を踊らせていただいたんですが、ご存知のように歌舞伎や文楽でお馴染みの「壇ノ浦兜軍記」の第三段〈阿古屋の琴責め〉という作品で、景清の行方を詮議せよということで、恋人の阿古屋が裁きの庭に出されて、琴や三味線、胡弓で音色が澄んでいたらということで許されるんですが。
この作品は長唄の素演奏でできているんでございますが、私初めて、最初は傾城ということで、胡弓のところでは景清との出逢いとか、それから最後の三味線では別れとか、自分は景清がどこにいるかわからないということを、音のイメージでつくってみたんですが、あの、本当に難しい……。

村:本当は、演奏しているだけの場面なんですよね。例の六代目中村歌右衛門丈や玉三郎さんなどの名演がありますけど、演奏しているところだけなんです。それをまたさらに、素唄の演奏の長唄、これに合わせて振りをつけたことに、ひじょうに興味をもって拝見したんですが、これがさらに、素踊りでしたね。特に、屏風の所に鞘形の模様が施されていましたね。

園:よく奉行所の、遠山の金さんなどの襖絵がああなっているものですから、お弟子さんが一生懸命つくってくれました。

村:最初は縛られている形で始まって、そして扇が、琴や胡弓や三味線に変わっていくわけですね。弾いている(形)だけでは踊りになりませんから。それがうま〜くだんだん踊りになっていく様が、見事に描かれていたと思います。

園:難しいですが、まだまだ勉強させていただきたいと思います。

村:心の流れというのが、ひじょうによく表れていると思います。素踊りというのは、やはり難しいでしょ。

園:そうですね。やり甲斐がある半面、衣装などのごまかしが利きませんが、全部身体表現でできればなあと思っております。役者さんと違ってわれわれは、できるだけそういうことを心がけたいと思っております。

村:思い入れや感情表現だけでなくて、「型」ですね。振り付けで、そのものを託していかなくてはならない、ということですね。

園:ところで、次の一中節の「都若衆万歳」と併せてですね、今日は「えん」ということに対して、村さん独特のユニークな、お話で日本語の言葉の豊富さというものを、皆さん大いに楽しんでいただけると思います。どうぞこれから時間の許す限り、えんえんとお話しいただきたいと思います。
私、次の幕の仕度に入らせていただきますので、中座をさせていただきます。(退場)。
            以下、次号


「物狂い考」その1 「物狂い考」その2
「物狂い考」その3 「物狂い考」その4
「道行きの美」はじめに 「道行き考」その1 「あな妖し考」その1 「あな妖し考」その2
「いきの美」その1 「いきの美」その2 「いきの美」その3